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フリーソフトウェアの一部について、近々配布を終了します

2011年6月11日

情報処理高度化等に対処するための刑法等改正法案(いわゆる、サイバー法案・コンピューター監視法案)が国会で審議中ですが、これに伴い、私が現在配布している次のソフトウェアについて、配布を終了します。

Round Window
MakeExe


次のソフトウェアに関しては、開発の終了を宣言します。

Nucleus CMS用のプラグインその他

また、次のソフトウェアについては、配布場所が今後変更になる可能性があります。

Jeans CMS
SFC mini
Oyagame
Suppon


私がこのような措置を行う事になった背景としては、平成23年5月27日に行われた、第177回第14号の衆議院法務委員会における、江田五月法務大臣と大口善徳委員とのやりとりにあります。一部、引用します。

○大口委員 それから、プログラム業界では、バグはつきものだ、バグのないプログラムはないと言われています。そして、例えば、無料のプログラム、フリーソフトウエアを公開したところ、重大なバグがあるとユーザーからそういう声があった、それを無視してそのプログラムを公開し続けた場合は、それを知った時点で少なくとも未必の故意があって、提供罪が成立するという可能性があるのか、お伺いしたいと思います。

○江田国務大臣 あると思います。


私は、プログラミングで生計を立てているわけではありません。初めに挙げた、配布を終了するソフトウェアについては、せっかく作成したのだからみんなに使ってもらおうという気持ちだけで、公開させていただいてきました。しかし、上記のような性質を持つ法案が公布された場合に、私が作成したソフトウェアにバグがあるというだけで「提供罪」なる物を疑われ、逮捕され起訴されて、最終的に有罪になってしまうと言う可能性がゼロではありません。

これは、杞憂であろうと思ってはいます。しかしながら、プログラミングで生計を立てているわけではない私にとって、フリーソフトを公開することにメリットはほとんどありません。そんな中で、公開することにデメリットが少しでもあるのならば、そんな危険をあえて冒すことはないという結論に至ったわけです。岡崎市立中央図書館にアクセスしたことが理由で逮捕された人がいたと言う事実も、今回の行動を決めた一因です。

Nucleus CMS用のプラグインを幾つかとSQLite用のツールを作成し、公開してきました。私自身が今、Nucleusを殆ど使っておらずJeans CMSに移行してしまったため、実質的に開発は今行っていません。従って、これらのソフトウェアについては、今回のことを機に改めて開発の終了を宣言させていただきます。重大なバグを発見した際は、使用を中止していただくか、ご自身でバグ修正して使っていただければと思います。

Jeans CMSを含め、公開を継続することに決めたソフトウェアが幾つかあります。その理由は、これらのソフトウェアを使うのはプログラミングの知識がある人に限られることと、オープンソースであることです。ソースコードを公開していますから、それを読めば、これらのソフトウェアがどういった動きをするかが予測できるはずです。ソースコードが何億行もあるような大規模なソフトウェアならまだしも、私が作成した程度の規模のソフトウェアで、利用者(多くはプログラマー)に知られることなく私が「意図しない」機能を挿入することは、技術的に殆ど不可能です。

(議論は次の記事に続きます。)

コメント

Kat (2011年6月11日 14:52:14)

参考
高木浩光@自宅の日記:ウイルス罪法案、バグ放置が提供罪に該当する事態は「ある」と法務省見解
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20110527.html

通りすがり (2011年6月14日 08:57:36)

最早ふざけています。
どうか真に受けずに海外サイトなどのどこか別の場所で配布して下さい。

亜山 (2011年6月14日 18:13:57)

妥当な判断だと思われます

code (2011年6月15日 18:36:42)

マイクロソフトみたいに「仕様」と言い張ったらどうなるんでしょう?

Katsumi (2011年6月16日 11:15:57)

皆さん、コメントをどうも有り難うございます。サイト管理人のKatsumiです。

6月17日に法律が公布されるようです。6月16日の参議院法務委員会でのやり取りをもう一度見直して、付帯決議の内容を吟味した後、配布を終了するか別の方法を取るか、決めたいと思います。

(上記、Katによるコメントは、私によるものです)

VictoryBomber (2011年6月17日 02:45:23)

とりあえず、法務省に電話して、以下の事だけは確認した。

・使用者との契約で、文書化すれば問題ない
(例えばプログラムの配布時、添付テキスト等をつけて
 意図しない事が行われる可能性がありますよ、と書けばOK)

・使用者がそれを知らなかったから意図に反する、とはならない
(最初にその件に関して同意させれば問題ないということ)

よって、単純なソフトウェア配布などは罪にはならない。

ということですので、頑張って下さい。

池田浩二 (2011年6月17日 07:54:29)

>VictoryBomberさん

いや、まだ安心できませんよ。
悪名高いPSE法のときは、経産省の解釈が「中古は大丈夫」から突如変更され、中古でも違法ということになったのです。
そこからPSE法廃止運動が沸き起こりました。
現に、参議院法務委員会での江田法務相の答弁もニ転三転しています。

あとですが、実際にソフトを取り締まるのは警察じゃないんですか?
警察の解釈を聞くべきでは。

VictoryBomber (2011年6月17日 21:49:20)

>池田浩二さん
どうもです。
これからメールにはなりますが、サイバー警察に質問状を投げます。
納得の行く回答でなかった、又は返事が遅い場合、直接電話します。
また、あまりにひどかったらマスコミにも電凸します。

池田浩二 (2011年6月17日 23:38:42)

一般社団法人情報処理学会が動いたようです。

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」 [1]に対する要望
http://www.ipsj.or.jp/03somu/teigen/johoshorikodoka2011.html

Katsumi (2011年6月18日 15:50:02)

16日の法務大臣の答弁に関して、考察してみました。6月18日付の記事(次の記事)を参照してください。
http://www.recfor.net/jeans/index.php?itemid=822

KEY (2011年6月19日 19:21:56)

ちょっと信じられない法案ですね。
フリーソフトから発展した技術もあるというのに。
日本ではもうここで頭打ちですね。

私もツールを他人に提供してましたが、もう辞めます。

Katsumi (2011年6月26日 23:39:23)

「Round Window」および「MakeExe」について、配布を続行することにしました。詳しくは、6月26日付の記事をご覧ください。
http://www.recfor.net/jeans/index.php?itemid=823

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