放射能

政府と東電は、高濃度放射能汚染水漏出の健康への影響について、説明すべき

2011年4月6日

まず、次の算数の問題を考えてみてください。水溶液の濃度の概念が入るので、理科の問題と言って良いかもしれません。中学生までに学習する内容だと思います。

ここに、濃い砂糖水576mlと、薄い砂糖水1万1500mlがあります。濃いほうは薄いほうの20万倍の濃度です。さて、どちらのほうがどれくらい多く砂糖が含まれているでしょうか?ただし、小数点以下は四捨五入して答えなさい。

答え: 576 ÷ 1万1500 × 20万 = 10017.39.... ∴ 濃い砂糖水の方が、薄いほうより、10017倍多い。


ここで出した3つの数字、576、1万1500、20万の3つの数字は次の事柄に関連します。

1)福島第一原発2号機には3日朝の段階で毎時8トンの水が注ぎ込まれている
 毎時8トンは、毎秒2.2リットルです(8000 ÷ 60 ÷ 60 = 2.222…)。 ピット側部からの水の出方を見ると毎秒2.2リットルだとしても不思議ではありません。つまり、2号機に注入されていた水とほぼ同じ容量の水が、海に流れ出ていたものと思われます。4月2日に漏出が確認されて、4月6日に止まったわけですから、3日以上出続けていたことになります。毎時8トンが3日だと、8 × 24 × 3 = 576 トンです。

2)1万1500トンの低濃度汚染水、海への放出作業続く
 東京電力は、福島第一原発所の放射能汚染水のうち、比較的汚染度の低い1万1500トンを海へ放出するとしました。

3)放出される低濃度汚染水は、従来タービン建屋から流れ出ていた高濃度のものと比べると、20万分の一という、相対的に低い放射能濃度
 官房長官の記者会見によると、2号機のタービン建屋から流れ出ていた放射能汚染水の濃度は、意図的に放出した低レベル汚染水の20万倍の濃度であったことが分かります。

したがって、先の計算をここでの汚染に当てはめると、概算では、2号機から漏出した放射能の量は、1万1500トンの低濃度汚染水に含まれていた放射能の量の、実に1万倍であったことが分かります。これはあくまで概算値なのであって、実際に2号機ピットからの漏出は毎時8トンではなくその半分の速度だったかもしれないし、3日間とした漏出時間はもっと長かったかもしれないので、実際の値は多少ずれているわけです。加えて、官房長官が示した、「20万分の一」という濃度の違いも、ある程度の誤差が含まれているはずだし、ピットから流れ出た放射能が、まだ原発の敷地内の湾(コンクリートの防波堤で囲まれている)の中に一定量残されているかもしれません。なので、1万倍ほどひどくは無かったかもしれません。しかし、仮にここでの計算と実際の汚染の間に2桁の違い(99%はまだ防波堤内にとどまっているなど)があったとしても、海洋に溶出してしまった放射能の量は低濃度汚染水に含まれていた量の100倍はあるわけです。

東電と政府は、低濃度汚染水について各方面で謝罪を行っていますが、少なく見積もっても100倍以上の汚染を引き起こしたであろうと思われる2号機からの漏出の影響に関して、ほとんど言及していないように思われます。なぜなのでしょうか?私には分かりません。「低濃度汚染水の放出による健康への影響は少ない」というのは納得できます。しかし、2号機からの漏出がどれくらい健康へ影響するのか報道されていないのは、非常に疑問です。私自身も、どれくらい影響があるのか、良く分かりません。

一番初めに算数(理科)の問題を出したのは、ここで問題にしている汚染が、ちょっと知識のある人なら誰でも分かりうることを示したかったからです。東電・政府はもとより、多くのマスコミや学者の人たちは皆、分かっていると思われます。もし私の計算に間違いが無いのならば…。

コメント

Kat (2011年4月16日 20:33:06)

http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011041701000150.html
『原発からは事故後、高濃度の汚染水の流出が続いていた時期があり、海への放出総量もかなり多いとみられるが、経済産業省原子力安全・保安院は「不正確な情報を国民に出すのは良くない」と推計を示すのに慎重だ。』

レベル7への引き上げのときと同じように、概算値がある程度煮詰まったところで、公表するようだ。

Kat (2011年4月17日 06:46:46)

低濃度汚染水の総放出放射能量は1500億ベクレル
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110416/dst11041609480009-n1.htm

この1万倍が海に出たとすると、1500兆ベクレル(1.5x10^15ベクレル)となる。これは、空気中への総放出量63万テラベクレル(6.3×10^17Bq)に比べると、数10分の一の値。

ちなみに、AERAが4月10日にこの記事の件を指摘した様だ。
http://www.aera-net.jp/summary/110410_002331.html

Kat (2011年4月21日 01:38:10)

東日本大震災:福島第1原発事故 高濃度汚染水、海へ流出4700兆ベクレル
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110421dde001040011000c.html

やっと、出た。数万倍のレベルだとの試算。これを今公表するというのは、ほとんどの国民にとっては、隠していたようにしか見えないのではないだろうか?

Kat (2011年5月20日 20:13:06)

3号機から海に20兆ベクレル流出
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110521/dst11052111480007-n1.htm

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